Rassvet 歩行編

久々にお手入れする上でちょいと模様替え。読んだ本とか行った場所について買いてくつもりです。

下学上達の本棚:第1回「風雲児たち」みなもと太郎

「どんな歴史書よりおもしろい。どんな歴史書よりよくわかる。
 江戸時代を四半世紀かけて走り続けた男ーー
 それが、みなもと太郎だ!」
呉智英…思想家・評論家)

 

風雲児たち (1) (SPコミックス)

風雲児たち (1) (SPコミックス)

 

 

 

風雲児たち全20巻 完結セット (SPコミックス)

風雲児たち全20巻 完結セット (SPコミックス)

 

 

 
 表紙を見ると、「なーんか堅苦しくて読みにくそう…」と思うかもしれませんが、中身の絵は全然ちがう!
 すごくギャグタッチで読みやすいのです。
 
「なんたることかサンタルチア!」
 
 この漫画は現在(2014年8月)までも連載中の作品ですが、連載がはじまったのがなんと1979年。つまり35年間も連載している、長寿漫画なのです。
 …いったいなにをそんなに長い間書いているのか?
 この漫画は幕末を舞台に、明治維新を起こした英雄・豪傑・市井の人々を描いた群像劇で、彼らをさして風雲児たちと言っているわけです。
 …じゃあ幕末の話だけで何十年も書いているのか?
 いやいや、実は、この漫画、はじまりは明治維新の267年前、1600年の関ヶ原の戦いの物語からスタートしているのです。
 …幕末漫画で関ヶ原
 そう、「みなもと史観」によると、明治維新がおこる根本的な要因をたどっていくと、それは関ヶ原の戦いにあるのです。
 
 なんのために関ヶ原に来たのかまったくわからない藩が三つある すなわち長州 薩摩 土佐の三国であった
 
 関ヶ原の戦いで活躍もできず、討ち死にもせず、ただボケっとしてるうちに戦争が終わってしまったこの三藩。彼らは戦後、徳川幕府にとことんイジメぬかれます。。
 怒りと恨みの蓄積がピークを迎えたとき、土佐から坂本龍馬たちが、薩摩から西郷隆盛たちが、長州からは吉田松陰たちが現れて、日本の歴史を大きく動かしていきました。
 関ヶ原の敗北者たる三藩が、復讐を果たす物語こそが明治維新なのです。
 
 しかし彼らが登場するためには、江戸時代の約260年間を通じて立ち現れてきた様々な「風雲児たち」の築いた土台あってこそでした。
 保科正之杉田玄白前野良沢林子平、高山彦九郎、田沼意次平賀源内最上徳内、大黒屋光太夫、シーボルト大塩平八郎、渡辺華山、高野長英
 彼ら彼女らが自分の理想や目的を目指し、がむしゃらに生きようとします。しかし、弱い人々を守るという理想は、強い人々たる権力者たちと衝突せざるをえません。
 幕府という強大なシステムは、風雲児たちに有形無形の抑圧を加えてきます。それが幕府自身を滅亡に導くとも知らず…
 
 上に挙げた風雲児たちは、多くの人にとっては知らないか、高校日本史で「あーそういやこんな奴の名前を暗記した気がすんなー」という程度の存在にすぎなかったでしょう。
 しかしこの漫画の中で努力し、苦悩し、泣いて笑い、ギャグもかまして図太く生きる風雲児たちの姿を見ていると、「暗記」すべき記号でしかなかった歴史上の人物たちが、魅力的で鮮やかな存在として浮かび上がってくるのです。
 
 そして彼らの人生をたどって、いつしか幕末にまで至る時…それまでに起きた様々な出来事が、実はさまざまな形で関連している事に気がつくでしょう。
 何百年も前に起きた出来事Aが、幕末に大きな影響を与えてくる。それがまた、幕末の違う出来事に大きな影響を与える。
 歴史がタテとヨコで一気につながっていくのを理解する快感を、漫画を読んでいるだけで体感できるのです!
 やがて一つの壮大なタペストリーのように、「明治維新」という事件を描き出されていくのですが…
 
 ありがたいことに、というべきか、まだこの漫画は連載中で、江戸幕府が潰れるまではまだまだ時間が掛かりそうです。
 でも作者のみなもと太郎先生は御年67歳(Wikipedia調べ)。
 …やなせたかし先生並みに長生きして、最後まで描ききって頂きたい!
 
ということで今日は「風雲児たち」をご紹介しました。全巻セットで自習室にそろえておりますので、ぜひご覧ください。そして買え!オススメです!
 
「人の命は短いのです。ぼくと一緒に学びましょう…!」