下学上達の本棚:第26回「おおきなかぶ」ロシア民話 A.トルストイ再話
「うんとこしょ、どっこいしょ」 おじいさんはかぶを収穫しようとしましたが、大きすぎて一人では抜くことができません。
- 作者: A.トルストイ,佐藤忠良,内田莉莎子
- 出版社/メーカー: 福音館書店
- 発売日: 1966/06/20
- メディア: 大型本
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自習室に置く絵本を探して「おおきなかぶ」を手にとったとき、「え、これってトルストイが書いたの?」と勘違いしてしまいました。
「再話」とは民話や伝承、古典文学などを、子どもの読みやすい形に書き直すことです。例えばよく「本当は残酷なシストーリーだったシンデレラ」みたいな話がありますが、そういう残酷な部分や教育上よろしくない部分、問題はなくとも子どもには難解な部分を省略したり書き換えたりして、絵本にしたものを再話ものと言ったりします。
つまりトルストイはあくまで原型となる民話をリライトしただけなのですね。
じゃあ元々の話はどんな感じだったんだろうと調べたところ、なかなか面白いことがわかりました。
「おおきなかぶ」は、まずお爺さんが引っこ抜こうとして出来ず、その後おばあさん、孫娘、犬、猫、ねずみの順で手助けにやってきて、最後のネズミが手伝ってようやくカブが引っこ抜ける、というあらすじです。
力の弱い物でも一致団結すれば大きな物事を動かす事が出来る、という教訓や、一番力の弱いネズミが最後の決め手になる面白さなどが、今日までこの話が愛されている理由でしょう。
しかし、大正時代にこの話が日本に入ってきた時は、ネズミくんは登場してなかったようです。その代わり、五本の「足」が助っ人に来たという筋書きでした。
何言ってるのか良く分からないでしょうが、僕も良く分かりません。「足」ってなんだ「足」って。誰の足だ。そういう疑問を解消してくれるこんな図が残っています。右側に注目。
…うん、足だね。
ということで、「足」の助けを得てかぶが引っこ抜けるという予想を裏切り期待を裏切らない展開がバカ受け、昭和初期までこの「足」版の「おおきなかぶ」が読まれ続けます。
しかし昭和がすすむにつれ、やがて「足」の代わりに「ネズミ」が助っ人に来る事になります。
このネズミも日本で勝手に付け足したものではなく、ロシアの別な地方の「おおきなかぶ」に出てきたそうです。まあ民話って地域差があるからね。
しかしそのネズミ、役立つどころか「かりかりかぶを食べちゃった」と、おじいさん達が死にものぐるいで引っこ抜いてるかぶを横から搔っ攫う暴挙を犯します。しょせん病原菌媒介。
しかし日本ではそのネズミが最後の助っ人として現れ、無事かぶが抜ける事とあいなったわけです。
いやあそれにしても、「おおきなかぶ」の絵本の紹介をするはずが、予想外の方向に飛んでってしまった。
今回の記事の元ネタは下のアドレスのpdfなので、興味をお持ちの方はぜひ読んでみてくださいませ。