Rassvet 歩行編

久々にお手入れする上でちょいと模様替え。読んだ本とか行った場所について買いてくつもりです。

下学上達の本棚:第21回「学び続ける力」池上彰

 

学び続ける力 (講談社現代新書)

学び続ける力 (講談社現代新書)

 
学び続ける力 (講談社現代新書)

学び続ける力 (講談社現代新書)

 

 

 

 学ぶ楽しさを知ること。それが現代の教養なのではないでしょうか。

 では、そのためには、何をどう学んだらいいのか。そんなヒントになればと思って、この本を書きました。この本のテーマは、「現代版教養のすすめ」なのです。

 (「学び続ける力」池上彰

 

 朝日新聞とのゴタゴタでいま話題の池上彰を知らない人はいないでしょうが、本を読んだ事があるという人は意外と少ないのではないでしょうか。

 池上彰の本はすごーく沢山出てますが、時事問題や基礎知識を説明した「解説本」と、読書法や勉強法などの「ハウツー本」に大きくわかれます。

 前者は「知らないと恥をかく世界の大問題」シリーズですとか、「そうだったのか!」シリーズや「池上彰の〜入門」とかの本ですね。後者は「池上彰の新聞勉強術」「<わかりやすさ>の勉強法」など。

 どれも平易な言葉や図解が多く、知識の確認や基礎勉強、勉強の仕方の見直しをサックリしたい時などには良い本だと思います。

 この「学び続ける力」は、どちらかと言えば後者のハウツー本に入るのですが、普段の本が「すぐに役立つ知識・情報を蓄える」ための勉強法をレクチャーしてるのに対し、こちらはもう少し広い意味での学習、つまり「教養」を身につけるための学びをどう作って行くか、という本となります。

 

 この本は、池上彰が教授として赴任した東京工業大学リベラルアーツセンターの授業をどう進めて行ったかを軸にしています。そこで池上彰が気にしているのは、理系と文系の断絶をどう乗り越えるのか、ということです。

 東日本大震災による原発事故で、東電関係者や原子力関係の学者たちは専門用語をまくしたてて事態の説明を行いました。彼らはそれで十分説明したつもりだったかもしれませんが、理系知識の無い一般市民は小賢しい専門家にごまかされてるような気になり、それが今日までの電力業界への不信感につながってしまいました。

 つまり、理系の人間は文系の人たちに理解してもらおうという意識を怠ってしまった。文系もまた、理系の人々とその知識を理解する努力を放棄する結果になってしまったと。

 その断絶を埋めるためにも、理系エリートである東工大の学生に「教養」が必要だと、池上彰は考えたようです。

 

 さて、そもそもなにが「教養」と呼べるものなのでしょうか。

 池上は、教養を「役に立つか分からないけど、ためになる」ものだと述べています。

 「すぐに役に立つものは、すぐに役立たなくなる」「すぐに役立たないものは、ずっと役に立つ」というフレーズは、この本の中で何度も語られる事です。

 池上彰自身がすぐに役立つ情報としてニュースの解説をやってきたわけですが、今回はその背景となる歴史社会についての知識や、哲学書、古典文学などをひも解くことの重要性を説きます。

 

 しかしページのほとんどは、ノート術や読書法、新聞活用術など、「どうやって教養を勉強して行くか」についてすぐに役立つ情報をのっける形になっており、その辺ちょっと失敗してるなという気もするのですが。

 それについては本人もあとがきで「いやー書いてるうちに脱線しちゃった」と言ってるので、まあドンマイです。

 

 さて、じゃあ教養を身につけたらどうなるというのか?教養があるからといって、先に述べたような断絶をなんとかできるわけではありません。

 しかし、教養があればこそ、異なる知識や文化的背景を持つ人たちと折衝することもできるのです。大事なのは、教養を得た後の、その知をどう生かして行くかということです。

 本を読んで知った風な口を聞くだけ、知識を自分だけのものにするのは、学盗人です。

 自分の得た専門知識を、どうやって世のため人のために生かして行くか。それを考えるための土台となるのが、教養なのです。

 

 

………

 であるがゆえに、教養を身につけたからには、傍観していてはだめで、社会に対して、積極的にコミットメントする、参加する、関わって行かなければ、真の教養人とは言えない、ということだと。

 (「学び続ける力」池上彰

 

 高校生や新しく大学生になった方、専門知識ばかりを勉強しがちな社会人の方々には、一度読んでみると、勉強に対する姿勢を考えなすことになる本だと思います。

 オススメです。