Rassvet 歩行編

久々にお手入れする上でちょいと模様替え。読んだ本とか行った場所について買いてくつもりです。

下学上達の本棚:第7回「読書の技法 誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門」佐藤優

 なぜ、読書術が知の技法のいちばん初めに位置づけられなくてはならないのだろうか。

 それは、人間が死を運命づけられている存在だからだそのために、時間が人間にとって最大の制約条件になる。

 (「読書の技法 誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門」佐藤優

 

 このブログをご覧の方は、わりあい読書家の方が多いと思います。

 「いやあ、自分は読書家なんてほどじゃないよ」と謙遜される方もいるでしょうが、いやいや、いまどき活字を読まない人は本当にまったく読まないですからね。なにせ今は本が全然売れない時代ですから、家具屋も本棚を作らなくなっています。本棚がお家にある人は、それだけでも日本人の上位何十%に入る、かなりの読書家です。

 

 では何のために読書するか、大きく分けて二つあると思います。一つは気分転換、娯楽で行う読書。もう一つは知識や考え方を身につけるための読書。

 とくに自習室なんてところに興味を持たれる人は、後者の読書を行う方が多いのではないでしょうか。

 知識や知恵を手に入れる読書なら、出来るだけ効率よくやるべきでしょう。なぜなら人生の時間は有限で、読める本の数は限られているからです。だから世の中には出来るだけ多くの本が読めるよう、速読術の本があふれています。

 かといって読んだけど何も頭に残って無いのでは意味がありません。読んだことをしっかり理解して自分の血肉とする「熟読」が大事だと、最近見直されてきています。

 その中で今回ご紹介したいのは、「月平均300冊、多い月は500冊以上」の本を読む「知の巨人」と呼ばれる作家、佐藤優の「読書の技法という本です。

 

読書の技法 誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門

読書の技法 誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門

 

 

 佐藤は元外務省官僚で、「ムネオハウス事件」で有名な鈴木宗男と一緒に逮捕されてた人ですね。今は国際政治評論家のような立場の作家になっています。この人は元々崩壊時の在ソ連日本大使館に勤務していた人で、その関係でロシア人学者や知識人と広く交流があります。 

 

 筆者が、サーシャやアルチューノフ先生の膨大な読書量から学んだのは、その見た目の読書量ではない。そうではなく、その根底にある基礎知識と強靭な思考力と。それを身につけるための熟読法である。

 上辺の読書量だけを真似してもまったく意味がなく、また真似することもできない。基礎知識があるからこそ、該当分野の本を大量に読みこなすことができるのだ。

 (佐藤優 「読書の技法 誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門」)

 

 

 この本で繰り返し語られているのは、「基礎知識の大切さ」です。

 「素早く読む」「深く理解する」のどちらをやるにも、そのジャンルの基礎的な知識、土台となる学力必要です。それが無いと「えっこれってどういう意味?」といつまでたっても先に進みませんし、さっさと読んでも本の上辺だけをなでて理解できないまま終わってしまうからです。

 たしかに、専門的な高度な知識を扱うほど、基礎的な用語の定義であるとか、常識的な部分をおろそかに出来なくなります。

 

 たとえば私は、大学時代に農村の研究調査を行って、卒業後は農業関係の出版社に勤めていました。入社したらまず、小学校の地理の授業で習うような「一年間の農作業の流れ」と「理科の基本」から叩き込まれました。

 「耕耘」は何のためにやるのか。「ph」とはなにか。知ってる人には常識ですが、意外と曖昧なままにしていた知識も多いものです。そして、そういう基礎的な知識が曖昧なままだと、仕事に大きな影響が出ます。

 農業には「チッ素」「リン酸」「カリ」という三つの要素が大きく関わってくるのですが、それぞれが一体どういうものなのか、中学生レベルの化学の知識が必要になるわけです。これを知らなければ農家に話を聞きに行くことも出来ない。「おまえの所の本は本当に大丈夫か?」と信頼を失います。

 逆にそういう基礎知識をしっかり身につけると、「土壌中のECが高温障害発生時の作物の発育にどのような影響を与えるか」みたいな小難しい話にもついていけたりします。

 

 そんなわけで、佐藤は高度な知識に到達するにはまず「高校までで習う程度の基礎知識」が大事だと言います。そして、難解な本を素早く読みこなす時だけでなく、しっかりした基礎知識を身につけるためにも、読書法が必要なのだと説きます。

 

 佐藤は読書のやり方を大きく「熟読」「ふつうの速読」「超速読」の三つに分けています。そして「熟読」と「速読」は裏表一体のものであり、熟読術なくして速読術もない、と言い切ります。

 なぜなら「速読術」とは、「たくさんある本の中から読まなくても良い本を探し出す作業」だからです。

 本には、難解で時間がかかる割には中身が無い本もあれば、短くても読むたびに様々なことを学べる本もあります。後者はたっぷりと時間をかけて繰り返し何度も読んだりすべきですが、前者にかける時間は1秒でも少ないほうが良い。だから「超速読」が必要なのだと言うことです。

 これは5分程度で一冊終える、と時間を決めて行います。パッパッパとページ全体を眺めながらどんどんめくり、中の文字は追いません。その中でも太字の強調部分や、自分の目に入ってきて気になったところは注意して、必要そうならマーキングをしておきます。そして結論部を読み、この本がおおよそ自分に必要そうな物かを判断します。

 「月300冊」というのは、あくまでそうやって「本の選別」を行う作業も含めてなのですね。

 

 では「熟読」「ふつうの速読」の方はどうするか。基礎知識を身につけるには、どんな本を読んで行ったら良いのか。

 そのあたりは、是非自習室に来てこの本で確認してみてくださいよ。なんたってこのHPは自習室の宣伝ですから。

 

 筆者は図書館をあまり利用しない。図書館の本は書き込みができないからだ。しかし、図書館での読書が効率的だという人もいるはずである。落ち着いた喫茶店を好む人も入れば、電車の中がいちばん捗るという人もいる。

 あるいは、有料の自習室がいいという人もいるはずだ。人間はケチな動物なので、カネを払うと払った以上を取り返したくなる。その特性を利用するわけだ。

 大事なのは、自分にとっていちばん読書が捗る場所を見つけ、作ることである。

 (佐藤優 「読書の技法 誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門」)

 

「知」の読書術 (知のトレッキング叢書)

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ぼくらの頭脳の鍛え方 (文春新書)

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