Rassvet 歩行編

久々にお手入れする上でちょいと模様替え。読んだ本とか行った場所について買いてくつもりです。

下学上達の本棚:第5回「ホームセンターてんこ」とだ勝之

この自習室の机や本棚。実は、殆ど私が作った自家製のものであります。

 ふつうお店を開くときは、家具屋から机を買ってくるか、あるいは大工に頼んでオーダーメイドするようなことが多いのでしょう。しかしこの自習室の中で他所から買ってきただけのものというと、会議机と小物置きの棚…あと椅子。椅子は居心地に直結するし、安全性の問題もあるので、ここには結構お金をかけました。

 なんでいちいち自作したかというと、あんまりお金が無かったからというの大きいのですが、ちょうど良いと思える物がなかったのもあります。

 そのへんの自習室や個別指導塾で使ってるみたいな机だと、高いくせに作りがショボいし、サイズも小さかったり大きすぎたり。こんなもんで良いなと思うと、目ん玉飛び出るような値段だったり。

 納得できる物が無いならどうするか。作ってしまえば良い!

 そもそもゼロから自分で店を作るのだから、机や本棚だって作ってみよう。いや、本当のことを言えば、前々から自分で作ってみたかったのです。

 だって「ホームセンターてんこ」で、DIYがとっても楽しそうに描いてあるんだもの。

 

ホームセンターてんこ(1) (KCデラックス 月刊少年マガジン)

ホームセンターてんこ(1) (KCデラックス 月刊少年マガジン)

 
ホームセンターてんこ コミック 全5巻 完結セット (KCデラックス)

ホームセンターてんこ コミック 全5巻 完結セット (KCデラックス)

 

 

 

 「電動工具なんて大げさな!…なんて思ってただろ?でも本当は腕力の弱い女の子こそ使うべきなんだよ」

 「すごい!これがあったら何でも自分で作れそう!!」

 「だろ!?だろ!それなんだよ!!商品と共に作る楽しさを提供する!それがホームセンター TENCOのサービスだよ」

 (天道功作、井本典子「ホームセンターてんこ」1巻 とだ勝之

 

 作者のとだ勝之さんは、今は亡き「コミックボンボン」で「DANDANだんく!」などを連載された方です。

 物語は、なんでもそろう個人経営のホームセンター「TENCO」の店員、天道巧作と、もの作りの楽しさに魅せられた女子高生、井本典子の二人の主人公が、「こういうものが欲しいんだけど」「こんなんあったら便利だなー」という様々な要求に応えるべく、色々な工具や道具を使ってお悩みを解決していく…というものです。

 

 「もの作り漫画」というと、料理漫画は沢山あるのですが、こういう工作を取り上げた漫画ってあんまりないんですよね。最近は農業ブームなのか農業テーマの漫画作品も増えてますけど、そういうのも含めてもの作り漫画が盛んになってほしいものです。

 ところでまたちょっと話がズレるのですが、多くの料理漫画を読んでみると、大体共通しているのは、「結局バトルものになる」ってことなんですね。ただ料理作ってみんなで食べておいしいね、というのでなく、ライバル店との料理対決だの、料理大会で優勝を目指すだの、誰かと競わせる話になってしまう。「クッキングパパ」とかの例外もありますが。

 それは編集部からそうしろと言われたり大人の都合が色々あるんでしょうが、ともあれ、作中のキャラクターが料理で創意工夫するのは、他人に美味しいものを食べさせるためというよりは、ライバルに勝つために工夫する、という形になっちゃうのです。

 

 さて話を「ホームセンターてんこ」に戻しますと、この漫画は題材が「ホームセンターにあるものを使って工作する」ということもあり、どっかのアホな工作ライバルが出てきたり、世界征服を企む謎の工作軍団が開催する大会に出場したりはしません。

 「思い出のつまったタンスを使い続けたい」「変わったデザインのテーブルが欲しい」「もう少し小さくて軽いギターがあればいいな」…そんな、どこにでもあるようなちょっとした思い。「でもまあしょうがないか」となんとなく妥協しがちなその思いを、何とか実現できないだろうか?というのが、この漫画のキモなのです。

 主人公たちにとって大事なのは、使う人が喜ぶために創意工夫することなのです。

 主人公たちは、みんなの要望を叶えるために、どういう道具が使えるか、どんな作り方をすれば良いかを考えます。

 「電気ノコギリで切って、電動ドリルで組み立てなおす」「三枚の板を接着して一枚の天板にする」「ステンレスの棒と木の棒を組み合わせて…」

 問題解決のために描かれる創意工夫は、決して派手なものでなく、言われれば「ああ、なるほどね」「そんな風にやれば確かにできるよね」と思うようなものです。

 しかし大事なのは「自分(読者)でもやれる」ことです。誰もマネできないような達人の技なんてのは、この漫画には殆ど出てきません。

 なにせこの作品に出てくる制作物は、みんな作者が実際に作ってみたものばかり。巻末のおまけ漫画や作者のホームページでご確認頂けます。

 誰でもできる技術であっても、誰もが同じにならないのはアイディア、発想です。漫画ではこう作ったけど、自分ならどう作るか?漫画に描いてないオリジナルのものを作るとき、どんな工夫をすれば完成するか?もっと良い物にするためにはどうすれば?

 読者が実際に何かを作るときには、登場人物たちと同じように悩むことでしょう。それこそが、創意工夫の過程こそが、「ホームセンターてんこ」の面白さであり、「もの作り」の面白さの本質なのです。

 必要なのはホームセンターで揃えた道具と、注意深さや集中力、望みを実現させるアイディア。それさえあれば、どこの誰でも、漫画の主人公たちと同じ様なものが作れる。自分にもきっとできるという希望やワクワクした気持ちを、この本は与えてくれるのです。

 

 で、わたしの自習室のDIYはどうなったか。

 まあ結局、「机の天板はちょっといい材料使いたいよね〜」とかやってるうちに、お店で机を買うのと値段的には大差なくなってしまったのですが、それなりのものができたと思います。

 それになにより、「作ることは楽しい!」ということが、改めて確認できました。

 みなさん、ぜひ自習室にいらして、実際にご覧になってください。

 そして休憩室の本棚で「ホームセンターてんこ」を読んで、皆さんも何か作ってみましょうよ。

 オススメです!

 

 「今までいつも面白いこと楽しいことを考えとったと。きっちり作ることも大事やけど、あたしの一番は面白いことをかんがえて、それを見た人がビックリしたり喜んだりすることやけん!それがあたしの工作やもん!」

 (井本典子「ホームセンターてんこ」5巻 とだ勝之