Rassvet 歩行編

久々にお手入れする上でちょいと模様替え。読んだ本とか行った場所について買いてくつもりです。

下学上達の本棚:第36回「故事成句でたどる楽しい中国史」井波律子

「………全体的にみれば、時代が下るほど、中国の人々は故事成句を作り出すことよりも、すでに存在する故事成句をここぞという場面で、臨機応変に使いこなすことに力点をおくようになります。この傾向は現代に至るまで変わりません。」

(「故事成句でたどる楽しい中国史」井波律子)

 

 

 

 「推敲する」「五十歩百歩」など、それと知らず日常生活でよく使ってる故事成句。

 意味は知ってても成り立ちは知らないことが殆どですが、この故事成句がどのような背景で作られたかを見ていくと、これはそのまま中国の歴史と成るのです。

 …という本がこの「故事成句でたどる楽しい中国史です。

 

故事成句でたどる楽しい中国史 (岩波ジュニア新書)

故事成句でたどる楽しい中国史 (岩波ジュニア新書)

 

 

 この本を読めば、何気なく使ってた慣用句が実は中国の歴史由来のものと知ることができます。

 

 たとえば鳴かず飛ばずという言葉。「せっかく新しい製品を作ったけど鳴かず飛ばずだった」などで使いますが、これは内乱続く春秋時代に、楚の国で生まれたものです。

 当時楚の国では新しく荘王という人物に王位が移ったばかりでしたが、この王様がまたポンコツで、三年ものあいだ酒と美女にうつつを抜かして全然政治の仕事を行わない。我慢できなく成った部下が「世の中には三年間ずーっと飛びもしないし鳴きもしない、ダメダメな鳥がいるそうですが、何て鳥だかご存じですか」とイヤミを言ったところ、王様は「三年飛ばずとも、飛べば天に至るだろう。三年鳴かなくても、鳴けば人を驚かせるだろう」とやり返しました。

 実際その後荘王は心機一転、内政の充実を行い軍勢を広げて、最終的には荘王が覇者となります。

 

 …とまあ、こんな感じで「鳴かず飛ばず」という言葉は「パっとしないさま」を表す言葉ですが、もともとのお話だと「今はパッとしなくてもそのうち頭角を現す」という話だったのですね。言葉の成り立ちと同時に、楚の国が春秋時代においてかなりの強国として晋としのぎを削ったのもわかります。

 そんな風に、言葉の側面から歴史を見ていくことで、どの人物がどんなことを言ったかや、どの国がどういう状況だったのかが整理され、複雑な中国史がよく理解できます。

 さすが岩波ジュニア新書、読みやすく分かりやすい良本!

 まあやはり人気の高い三国時代の記述が多めで、メインは唐の時代までとなりますので、それ以降の時代の中国史ファンの方には物足りないかもしれません。

 しかし、高校生や社会人の方がおおまかな中国史の勉強をしたいという時に、取っ掛かりとして読むには最適な本だと思います。

 

 おすすめです!