下学上達の本棚:第35回「古墳の歩き方」まりこふん
古墳というと学校の日本史で暗記させられただけのクソつまらん記憶や、修学旅行で奈良の古墳をチラリと見て帰っただけの無味乾燥な思い出がよみがえるかもしれません。ですが、今あらためて古墳を訪れてみると、古墳の形状や立地、埋葬物とその保存状況などは実に千差万別、その現地の雰囲気を感じるだけでもなかなかに楽しいものです。
…という考えの人が増えているのか、本屋の歴史コーナーに行くと「古墳めぐりガイド」みたいな本が何種類も出てるんですよ。いやマジで。
その中でも特にイラストや写真多め、しかもフルカラーで読みやすい、「古墳の歩き方」をご紹介します。
この本のポイントは、よくある古墳の歴史的な紹介よりも、駅から古墳までのアクセスの仕方や周辺情報に力を入れていることです。もちろんザックリとした歴史説明はしているものの、それは実際現地に足を運べば看板や資料館でもっと詳しく説明されていること。それよりも、「古墳めぐりねえ」と少しでも興味を持った人が、気軽に足を運べるように工夫されています。
例えば狛江市にある狛江古墳群と呼ばれる古墳の数々。どこにどんな古墳があるかを写真で説明し、さらに近所の和菓子屋まで紹介しています。鮎の姿焼きの和菓子ってどんなんだろう。そういうちょっとした楽しみも加えての紹介です。
歴史遺産ガイドというと、ストイックなお固いガイド本が多いのですが、この本はもっと間口を広げる意味ではすごくいい本だと思います。
惜しむらくは古墳というものの性質上、東北や北陸の情報が少ないんですよね。関東関西九州ばっか。まあメインはそっちなんでしょうがないんですが、東北とかにも古墳はあるので、それは自分で調べて旅する上級者向きということで。
都内近郊の古墳紹介が充実してるので、パラパラめくって休日の散歩ルートの参考にするといいと思います。
巻末の古墳グッズ・コレクションも必見。